パパはライバル【電子書籍】[ 川崎 キヨ ]

パパはライバル【電子書籍】[ 川崎 キヨ ]

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<p>パパが交通事故に遭った。
</p> <p>仕事に行く途中、車にはねられたんだ。
</p> <p>僕とママは、急いで病院に駆け付けた。
</p> <p>緊急手術を終えたパパは、集中治療室のベッドの上で目を閉じたままだった。
</p> <p>「とりあえず手術は成功しましたが、それ以上は何も……。
最悪の場合、一生このままかもしれません」</p> <p>お医者さんはそう言葉をにごした。
僕とママはそれ以上の言葉を失った。
</p> <p>「奇跡を信じましょう」</p> <p>ママは僕を抱き締めて、そう言った。
</p> <p>ママはまるで自分にそう言い聞かせているようだった。
</p> <p>僕はうなずいて、それに応えた。
</p> <p>ある日、僕がパパの入院中の病室で、ついつい居眠りしていた時だった。
</p> <p>「ねえ、起きて。
起きてってば」</p> <p>僕は耳慣れた声で目が覚めた。
</p> <p>そう。
それはパパの声だった。
</p> <p>ママの言う通り、奇跡が起こったんだ。
</p> <p>「よかった。
治ったんだね、パパ!」</p> <p>喜ぶ僕に対して、パパは思いがけない言葉を口にした。
</p> <p>「君、だあれ?」</p> <p>えっ?</p> <p>お医者さんの話では、パパは事故の後遺症で記憶喪失になってしまった。
しかも、自分のことを小学校5年生と思い込んでいた。
</p> <p>いくら説明しても、言い聞かせてもだめだった。
</p> <p>パパが小学校5年生?</p> <p>そんな……。
</p> <p>僕と同い年なんて……。
</p> <p>小学校5年生になったパパは、僕と同じ小学校の同じクラスに通い出す始末。
</p> <p>そして、僕が大好きなかすみちゃんのことを好きだとも言った。
</p> <p>もう、パパはパパじゃない。
</p> <p>僕のライバルだ。
</p> <p>絶対にパパには負けない。
</p> <p>負けるもんか……。
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